感動体験を通して
園長 奥村 恵美子
休日に、山中にある陶房に足しげく通っていた時期がありました。ある日、その山道で、10cm以上もある鮮やかな黄緑色の大カマキリを見つけました。この大カマキリを子ども達が見つけたらどんなに驚くだろうか。クラスの子ども達の様子を想像すると、どうしても捕まえたいと必死になり、首のところに手をやろうとすると…、大カマを振りあげ、その威嚇にひるんでしまいました。焦っても大きいだけに手が出せません。しかし、逃げようともせず、私とのにらみあいです。何分ぐらいたったのか…思い切って手のひらを下から、静かに差し出してみると、驚いたことに、ゆっくりと手の平に乗ってきたのです。それも、しなやかに優雅な動きで腕から肩へと移動してきたのです。一瞬の出来事に感動が走りました。
翌日、この大カマキリが幼稚園に登場。すかさず見つけた子ども達の驚きの声が恐怖や奇声になり、幼稚園中が大変なさわぎになりました。
私は、昨日の出来事を実感込めて子ども達に語りました。その後、クラスの虫博士と言われている男児が、勇敢にも手の平を大カマキリに近付けているのです。
昨日のように、男児の手の平に乗っていくのを見て、カマキリの習性なのか…と考えながらも人なつっこい大カマキリに感謝しながら勇気ある男児にエールを送りました。
この様子を、息をのむように見いっていた子ども達の中から「Aちゃんすごい!怖くないの、痛くないの」と心配そうであるが、皆、興味津々である。男児は得意げに、大きくても怖くないこと、羽の様子、体の割に脚は細いことなどを伝えていました。
この出来事以来、A児を中心にクラスの子ども達と虫との距離は、ぐーんと縮まり、羽をつまんだり、首や尻尾をつかんだりすると、虫が苦痛で威嚇する事を実体験の中で学びました。様々な生き物をありのままに受け入れ、大切に接する心が、思いやりや優しさに繋がり、他者の立場で考えたり、行動したりする心地良い感覚やその意味を幼児なりに感じ、気付いた一日でした。
体験した事は、心に刻まれ、いつまでも記憶に残っていきます。幼児期に大切な事は、人として「生涯生きていくための人格の基礎が培われていく時期」である事を重視し日々の教育の中で、心に響き心に残る体験を豊かにする環境の創造を進めています。
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